理事長あいさつ

「協力」という文字に込められた「力」とは何か

さふらん会理事長・島しづ子


「協力をお願いします」  


メンバーさんと一緒に過ごす時に、私がよく発する言葉が「〇〇さん、協力をお願いします」です。それでもメンバーさんの緊張がほぐれなかったりしたら、「人生は協力だよ、協力、協力。強力じゃないからね」と冗談言いながら過ごします。今日もその言葉を言いながら、「あれ、協力って『力』が三つもあるね!そうか、協力すると力が増すってことだ!」と思いました。親しい関係の中を生きるという事は、いさかいやトラブルが伴います。我慢できない事も多く、余裕が無いと叫びたいような心境にもなります。「どうしてわかってくれないのか。どうしてこちらの動きに合わせてくれない。どうして困った事をするのだ」と。  


少し休憩して、相手と距離をとり、誰かに気持ちを聞いてもらうと、相手も同じような思いかもしれないと気が付きます。だから「協力です」互いにちょっと我慢して、互いに歩み寄って、一緒に歩く。  


この協力は50パーセントづつの協力とか計算できるものではなく、それぞれの力に応じてということになるでしょう。なぜなら、私たちはそれぞれ与えられている賜物が違い、互いの出来る・出来ないの範囲が計り知れないからです。  


私はハンディを持つメンバーさんの生きる力にいつも圧倒されます。彼らは「生きる」という仕事をしながら、周囲を動かしています。この世は、力の強い者が弱い者に君臨しています。そこは強い者にも緊張ばかりで、人生を味わうことが出来ない気がします。  


弱い者同士が助け合い、協力し合う生活の方が豊かです。


この歩みは利己的な私には難しいですが、神様とみなさまの愛に助けられて歩んでいきたいと思います。

お互いに大切にされていると感じると人生の輝きが増していく

一般的の人達にはできることが、障がいを持っている方にとっては難しいといったケースも確かに存在します。しかしながら、そのようなハンデを持っているからこそ、障がいを持っている方々は人と人とが協力し合うことの大切さとそのパワーを、一般の方以上に理解しているように感じることが度々ございます。このようにして、障がいを持った方々は一般的な生産性という形ではなく、協力し合って「生きる」という仕事をすることで周囲を動かし、大切な学びのきっかけを与えてくれているのです。
そしてご利用者様は、相手に協力を依頼し共に達成していくことを繰り返し、自立した生活を目指しており、ここには「感謝」と「リスペクト」があって初めて協力関係が成立するものです。人には自己重要感という概念が無意識に存在し、他者から認められると本能的に大変嬉しく感じるようになっています。これを打算的に行うのではなく、心から相手のことを尊敬の念をもって接することで、本当の意味での協力・信頼が生まれるのかもしれません。ご利用者様にも、スタッフ達にも、そのような関係性になってくれるよういつも祈っております。

周りの人を大切にするとみんな幸せになりその輪が広がっていく

他人を貶して優越感に浸り自己重要感を満たすことは、誰にでもできることです。しかしながら、そこには貶された相手の涙が存在し、貶した本人も本当の意味で満たされることはありません。心からの善意と尊敬の意を込めた「ありがとう」といった感謝の言葉を伝えるだけで、相手と自分自身の自己重要感を満たせるものであり、その繰り返しが幸せの輪を周囲に広げていく力になります。

ご利用者様と一般の方々があたりまえに相互理解を深められる社会

ありのままの相互理解を深めるために積極的に活動を

一般の方々と一緒に名古屋市という地域で障がいを持った方々があたりまえに暮らしていく共存社会を目指すにあたって、特に重要なのがご利用者様と一般の方々が交流を持てる機会を積極的に作ることです。共存するためのコミュニティーを自分達で創っていくことで、お互いを良く知る機会を作ってまいりました。その最たる事業が「ヨナカフェ」と呼ばれる一般の方々の入店を歓迎するカフェを、ご利用者様が運営することです。
「ヨナ」とは旧約聖書にあるノアの方舟の物語に登場するヨナが由来となっており、詳細は割愛しますが、ヨナがもたらしたオリーブの葉が、喜びと感謝の想いで歓迎されたお話です。そのヨナのオリーブの葉のように、地域にお住まいの一般の皆様、そして一緒に活動する仲間達、そして何より生きていることそのものに喜びと感謝をもって共存社会を目指したい、そのような想いも込めて社会福祉法人を立ち上げ、ヨナカフェをはじめ様々な事業を経営しています。そこで販売しているおいしく仕上げることに大変こだわったパウンドケーキは女性に人気で、ホワイトデーのお返しにもぴったりで、フェアトレードのコーヒーとの相性もバッチリです。

拠点である名古屋で社会福祉法人さふらん会を経営する代表がいつもよく使う「協力」という言葉、そこには「力」が三つも入っており、協力し合うことで力が増し、一人ではできないことをみんなで成し遂げる原動力になると考えております。「一本では折れてしまう矢も三本集まれば折れることはない」と言った例え話もあり、また「三人寄れば文殊の知恵」ということわざも存在します。このように「協力」という言葉に秘められた三人の力もしくはそれ以上の人数の力を合わせることが、知的障がいというハンデを持った方々が地域で自立した生活を送るために必要なことでもあります。

協力していくにあたって大切なのが、押し付けがましい見返りを求めるような善意ではなく、相手をリスペクトし、対等の目線でお互い助け合っていくということです。前者は上から目線であり、場合によっては想定していた見返りが得られないと怒りを感じてしまうような、極めて自分本位なものであり、行動はどんなに親切でも善意とは呼べません。一方で後者は相手の想いや個性をありのままに尊重し、かつ相手の素晴らしいところを尊敬の念を持って接している善意です。この善意は見返りは求めず、ただただ「相手に喜んでほしい」「共に目の前の課題をクリアしたい」といった対等の目線がそこにはあります。